『何も不安に思うことはない。
俺がそれを取り除いてやる自信があるから』

”同棲”がカタチを為すことに不安を感じる私に
N氏はそう告げる。

N氏が”二人で住む部屋として”希望したのが、
 家賃**万程度の2LDKだ。

物件を探してみると思わぬ現実が待っていた。

東京で**万程度の家賃は、
けして豪華な部屋が借りられるわけではないことに。
 
札幌で同額の家賃で部屋を探そうとしたら
築浅のお洒落な2LDKのマンションに手が届くだろう。

私は、東京から家賃の安い”某県”にすることをN氏に提案した。

N氏は東京都内に限定したいわけではないらしい。
ただ乗り換えがなく1本で通勤できれば、という希望を追加する。

N氏の希望する条件と、私が希望する条件と
二つを兼ね備えた部屋は、当然ながら家賃が跳ね上がる。

N氏はそれでも構わないと言う。
該当する部屋があるならば、そこに決めよう。

ふたりで暮らすことになる”新居”に妥協は必要ない、と――

***
Power of Love』以来、
”ふたりで目標に向かって何かをする”ことはなかった。

あの日、

N氏は私の履歴書と職務経歴書を細かくチェックし、
大手企業の厳しい書類審査が通ることを目標に、
ふたりで一緒に書類を考え、作り上げたことがあった。

それよりもずっとずっと、
”同棲のための部屋”を探すことは、楽しかった。

元々何かを調べることは私の得意とすることであり、
素早く望んだ結果を出すことができる。

それはN氏を驚かせた。

普段はN氏の後を遅れて歩いては転ぶような私が、
N氏よりも先を歩いてあれこれと準備する。

そんな逆転をN氏は『気に入らない』と言いつつも、
どこか嬉しそうだ。

私が探し出してきた物件の間取り図やサイトをみて、

『この部屋にもしも住んだとしたら、ピアノは置けるかな?』
『大量の酒の瓶を収納する家具をここに置きたい』
『ベットはダブルの大きいやつが欲しいから、
この間取り図だと寝室はどこにする?』

N氏はあれこれ想像しては、私に意見を求めた。
まず私の意見を聞いて、自分の意見を出す。

かつてネットゲームでそうだったように、
N氏と私は終わらないワルツをまた、踊っているようだった。